「わかったつもり 読解力がつかない本当の原因」を読んだ感想
本書は
「わかったつもり」という状態がどのような状態なのか
「わかったつもり」の原因と対処法
について書かれている本です。
以下に個人的に重要だと思ったポイントをまとめていきます。
2種類の「わかったつもり」
「わかったつもり」には2種類存在するとして著者は以下のように述べています
「わかったつもり」には、ただ単に「読みが足りない状態」といったものもあります。第1章の「もしもしお母さん」を一読した後の状態を思い出して下さい。このときの「読み」は、物足りないものだったかも知れませんが、解釈として間違ってはいませんでした。しかし、「わかったつもり」というのは、常に「物足りない読み」によるというわけではありません。「わかったつもり」の状態には、「間違った読み」によるものも少なからず存在します。
さて、「間違ったわかったつもり」に、ひとつだけ付け加えておきたいことがあります。「わかったつもり」が「間違った読み」によるものでも「不充分な読み」によるものでも、本質的な違いはないということです。「間違った」または「不充分なわかったつもり」が維持されるのは、いずれの場合も「部分が読めていない」からです。
つまり「読みが足りない」状態も「読みが間違っている」状態も部分を正しく読めていないことが原因なので、部分を正しく読むことが大切であるという主張のようです。
本書では「読みが間違っている」状態を主なテーマとして取り上げていますが、「読みが足りない」状態に関しても詳しく知りたいので該当しそうな書籍があれば読んでみようと思います。
「わかったつもり」に陥るよくあるパターン
わかったつもりに陥るパターンとして著者は具体的にいくつかの例を挙げていますが、それらに共通して言えることは認知バイアスによって部分を読み間違えている点だと思います。
そのため認知バイアスへの対応策を調べることで「わかったつもり」から抜け出すヒントが見つけられそうです。
「わかった」と思った時から「わかったつもり」が始まる
わかったつもりの何が問題かというと自分では気づきにくいという点があげられるかもしれません。
「わからない」から「わかる」に 到るこの作業は、わからないことを調べていけばいいのですから、方向がみえやすいのです。 しかし、「わかった」状態は、ひとつの安定状態です。ある意味、「わからない部分が見つからない」という状態だといってもいいかも知れません。したがって、「わかった」から「よりわかった」へ到る作業の必要性を感じない状態でもあるのです。 浅いわかり方から抜け出すことが困難なのは、その状態が「わからない」からではなくて、「わかった」状態だからなのです。
他人からみると理解が浅い状態でも自分自身ではわかった状態にあると思い込んでいるため、そこから抜け出すことが難しい、または抜け出す必要があると思うこともない。
ではどうするかというと、一つ目は気持ちの問題になってしまいますが「まだ自分の理解は不完全である」という意識を持つことが必要なのかもしれません。エンジニア界隈でよく言われますが、「完全に理解した」ではなく「チョットデキル」という認識でいることが「わかったつもり」にはまらずにすむ方法だと思われます。
二つ目はより実践的な以下の方法です。
解釈は「正しさ」ではなく「整合性」で判断
著者は科学分野で活用される論理である帰納法ですら、法則が正しいことを証明できないことを例にあげ、以下のように述べています。
このように、科学の法則においてすら、「正しい」とは証明できないのです。まして、われわれが文章を理解するうえで構築する想像・仮定や解釈においてをや、なのではないでしょうか。われわれが想像・仮定を構築する際に、どのくらい合理的であり得るでしょう。 だから、 自らの解釈の「正しさ」を信じたり、「正しさ」を強調することは、他の解釈を排除することにつながりかねません。自らの解釈を押しつけることにもなりかねないのです。 科学においても、現象を整合的に説明できる仮説が、ある時点で複数個存在することは決して珍しいことではありません。
ここで大事なことは2点あり一つ目は「解釈の正しさを証明することはできないこと」だということです。
正しい解釈は存在しない。なので解釈の正しさに関して議論をしようとすると存在しないもの対象にしているため議論が錯綜する。ではどうすれ良いのかというと、解釈を判断する際は整合性、つまり誤りが認められるかどうかで考えるべきであるといえます。
この本では整合性を判断する具体的なテクニックについては述べられてはいないので、その辺りを知りたい場合は「現代文解釈の基礎」が参考になると思います。
2つ目に大事な点は「解釈は更新されうるもの」であることです。
正しいと思われていた科学的な仮説が新たな研究により覆されるように、正しいと思っていた解釈にも実は誤りがあって覆される可能性がある。このことを覚えておかないと自分の考えた解釈に固執してしまうということになりかねません。そのため、自分の解釈は常に更新されうるものだという意識を持つことが重要です。
この辺りは科学哲学でよく言われる反証可能性と呼ばれるものと一致しているように思えます。僕自身はあまり詳しくない分野なので今後勉強していきたいです。
まとめ
・「わかったつもり」は部分が読めていないことが原因
・部分が読めなくなるのは(多くの場合)認知バイアスのせい
・「わかったつもり」にあるかどうかは自覚しにくい
・解釈は常に誤りを含みうるもので更新されうるものである
「批評の教室」を読んだ感想
「批評と批判は違う!」とよく聞きますが、具体的にどう違うのかと常々思っていました。
そこで正しい批評とは何かを知るためにこの本を読んでみたので、感想を書いていこうと思います。
批評とは何か?
本書では批評という行為を以下のように説明しています。
作品の中から一見したところではよくわからないかもしれない隠れた意味を引き出すこと(解釈)と、その作品の位置づけや質がどういうものなのかを判断すること(価値づけ)
北村紗衣. 批評の教室 ──チョウのように読み、ハチのように書く (ちくま新書) (p.11). 筑摩書房. Kindle 版.
要するに批評は解釈と価値づけに分解できるとのことです。
どちらも難易度の高い作業ですが、個人的には価値づけは特に難易度が高いと感じました。
あとで詳しく記載しますが、価値というのは相対的に決まるため価値判断には他作品の知識や作品の歴史的背景知識が必要です。
また、価値をつけるということは反対の意見を持つ人たちからの批判にさらされる可能性もあります。
そんな難易度の高そうな批評ですが、批評にどんなメリットがあるのでしょうか?
著者によると楽しいからとのことです。
「批評なんてせずに何も考えずに見ればいいじゃないか」と言われた時には「批評をして掘り下げたほうが私は楽しいんです」と反論しましょう。
北村紗衣. 批評の教室 ──チョウのように読み、ハチのように書く (ちくま新書) (p.13). 筑摩書房. Kindle 版.
僕は意識して批評というものをしたことがありませんが、作品を楽しむという目的を忘れずに批評の練習をしてみようと思います。
批評はどうやって行う?
具体的にどのように批評を行うかというと、本書では「精読→分析→書く→議論」という4つのステップに分けて解説されています。
精読
現実世界の出来事と違って、作品内で発生する出来事には意味があります。その意味を汲み取るために精読が必要です。
具体的には
- 知らない単語は辞書で調べる
- 作品内の事実を整理する
- 何度も出てくる表現に注意する
などが挙げられています。
精読に関しては「現代文解釈の基礎」がとても参考になるのでおすすめです。
分析
精読によって得られた情報、作品・作者の歴史的背景、先行レビューをもとに解釈と価値づけを行います。
分析の際に役にたつ観点として以下の3つがあります。
- 批評理論:特定の観点から作品を批評する考え方(「ポストコロニアル批評」「フェミニスト批評」など)
- 図示:時系列や人物相関図などで作品内の出来事、表現を整理する
- 他作品との比較:歴史的背景が同じ作品、ジャンルが同じ作品、同じ作者の作品と比較して、共通点・相違点を見つける
個人的には批評理論と他作品との比較は知識の幅広さが問われるため、かなり難易度が高そうな印象です。
批評理論については「批評理論入門」などの解説書や実際の批評を読む等で学び、他作品の知識は実際に作品に触れることで身につけていこうと思います。
書く
「書く」のステップに関しては批評に関わらず、誰かに自分の考えを伝えるときに必要な考え方について述べられている印象でした。
批評とは少し離れますが、以下の文章は重要だと感じました
これまでに身につけた偏見の檻の中でいくら「自由にのびのび」やっていても、檻から出て自分の個性を発揮する方法は学べません。訓練を伴わない「自由にのびのび」は個性を伸ばす敵なのです。 自分は自由に考えられる人間だという思い込みを捨てるところから楽しい批評が始まります。スポーツでも音楽でも、技術向上のためにはとりあえず既存の型を学び、たくさん練習する必要があります。巨人の肩に乗れるくらいの訓練を積んで初めて、新しいものが生まれます。
北村紗衣. 批評の教室 ──チョウのように読み、ハチのように書く (ちくま新書) (p.135). 筑摩書房. Kindle 版.
ある程度型にはまりで訓練を積むことによって、必要最低限守るべきラインや破っても問題ないルールを知ることができるというのは様々な分野に共通する考え方だと思うので大事にしていきたいです。
議論
このステップは文字通り、自分の批評と他人の批評を比較して共通点や相違点について深掘りしていくというステップです。
今の僕には難易度が高すぎて流し読みをしてしまいましたが、本書では著者と著者の指導学生が「あの夜、マイアミで」と「華麗なるギャツビー」の2つについての批評を書き、意見交換を行う様子が記されています。
この辺りは実際に作品を読んで批評を書いた後に読み直そうと思います。
最後に
この本を通して一番印象に残ったのは以下の文章です
よく、「作品に間違った解釈はない」という人がいます。これは間違いです。作品に正しい解釈はありませんが、間違った解釈というものはあります。作品に向き合っている受け手はそれぞれ独自の考えを持っているので、一〇人の受け手がいれば一〇種類の解釈があり得ます。批評に唯一の正しい解釈というものはありません。しかしながら、あるフィクションがフィクション内事実として提示しているものを誤認したり、展開をきちんと理解していなかったりすることに起因する間違った解釈というものは存在します。
北村紗衣. 批評の教室 ──チョウのように読み、ハチのように書く (ちくま新書) (p.24). 筑摩書房. Kindle 版.
以前読んだ「頭がよくなる!要約力」にも似たような記述があります
意見は「みんな違ってみんないい」かもしれませんが、要約はそうはいきません。要約は共通基盤なので、それを欠くと非生産的になります。
生成AIによって文章の要約は容易になり、このまま技術が発展していけば「間違っていない解釈」ぐらいなら近い将来可能になりそうな気がしています。
ただし「価値づけ」は主観が入るので生成AIにはできない作業だと思います。
そう考えると「目の前の作品が誰にとってどのような価値があるか?」を判断することが人間に求められるようになるのかもしれません。
この本の著者は作品を楽しむために批評をしていると述べていましたが、的を射た批評をする能力は他者との差別化につながる貴重な能力になりそうです。
この本を通して、批評というものは作品を楽しみつつ自分の成長にも繋げられる有意義な活動だなと思ったので引き続き勉強してみようと思いました。
過去に書いた関連記事
初めて曲を作った感想(反省と備忘録)
作曲をしてみようと思い立ち、Logic proを購入して半年以上経過しました。
そして先日漸く曲(の体をなしているもの)をyoutubeに投稿することができたので感想を書いていく。
できた曲↓
それっぽいコード進行とそれっぽいドラムは思いつく
なんとなく「lo-fi」「雨」の2つをテーマに作ることは決めて、そこから「コード進行→ドラム→ベース」のような流れで作成した。
音楽理論の勉強は程々にして作曲に取り掛かり始めたので理論的にはメチャクチャかもしれないけど、それっぽい感じのコード進行にはなったかなと思う。
その次のドラムも意外とスムーズに打ち込みができた。
ベースに関しては、とってつけたようなフレーズで単調になってしまった印象。次回からはもう少し変化をつけてみたい。
メロディが思い浮かばない
ここが作曲上の1番の課題点で、驚くほどメロディが思いつかなかった。
「キーに合わせて適当にピアノを弾いてしっくりメロディを探す」という雑な方法で作ろうとしたのが反省点かも。
とは言え他に方法も思いつかないため、今後どうやって解決するかは宿題にしておく。
作ろうとしないと作れない
机に向かってDAWを起動しないと曲は作れない。いいフレーズを思いついたら作業をはじめようと思っていると、いつまで経っても作業は進まない。(他の人はどうなんだろう?)
当たり前のことだけど今後も同じ過ちを繰り返してしまいそう。。。
妥協しかしていない
作曲を進めれば進めるほど「なんか物足りない。。。」「もっといいフレーズがありそう。。。」などと悩んでしまって行き詰まってしまった。
でも「今の自分の実力ではできることが限られるのはわかりきっている」と気づいて、納得のいかない出来ではあるものの完成したと思うことにした。
今聞いても「もう少しなんとかなったんじゃないか。。。」と思うことはあるけど、今後作る曲で改善できればいいかなと思うことにしている。
「頭が良くなる要約力」を要約してみる
恐らくkindleセールで購入し積読してあった本なのですが、今後本の感想を書いていくなら先に読んでおいた方が良さそうだと思ったため読んでみました。
せっかくなのでこの本で学んだことを活かして、この本を要約していこうと思います。
1.意見は違っていい。要約はダメ。
「要約」という言葉の定義を調べると以下のように出てきました。
文章などの要点を取りまとめること。また、そのまとめたもの。
これを踏まえて考えると「要約が違う」=「文章の要点が違う」ということになります。
もし自分と他者の間で要点とするものが違っていると、コミュニケーションが成り立ちません。
著者は本書でこう述べています。
また人と深い関係を築きたくても、相手の言っていることがわからなかったり、意図が要約できたりしなければ、コミュニケーションを取ることができません。「あの人はいつもとんちんかんな受け取り方をする」ということになれば、知らず知らずのうちに排除されてしまってもいたしかたないかと思います。
つまり、「他者と意思疎通をはかる上では、要約の内容は他人と一致している必要がある」ということになります。
主観的な「意見」は人それぞれ違って当然ですが、客観に近い「要約」は人それぞれだと色々弊害がありそうです。
2.要約は人のためならず
著者は、要約には以下のメリットがあるとしています。
- 要約することで相手の労力を削減できる
- 要約することで会話しがいのある人だと思われる
- 状況がわからず置いてけぼりの人を助けることができる
恥ずかしい話、この本を手に取った私は「自分のために要約力を身につけたい!」という思いしかなかったので、他人のためになるという視点は新鮮でした。とはいえ自分にとってのメリットが少ないかというと、そうでもないと思っていています。
例えば周囲の人間の労力を削減できると「この人と一緒に仕事をしたい!」と思ってもらえるようになり、仕事のチャンスに恵まれるはず。状況がわからない人のフォローをすれば、そのコミュニティに必要な人間だと思ってもらえるでしょう。
要約での人助けは他人のためだけではなく、回り回って自分に返ってくるものなのかもしれません。
3.要約の技法
具体的な要約の方法に関しては「要約の準備をする時間を設ける」「テーマやキーワードを決める」など定番と言えるような方法もありますが、個人的に興味深かったのは
- パワーワードを入れる
- イラストで要約
の2つです。
本書におけるパワーワードというのは比喩表現に近いかなという印象でした。確かに比喩表現は「短いフレーズで複雑な物事を伝える」という点で要約に似ているかもしれません。
イラストでの要約に関しては、データビジュアライゼーションの専門家であるスコット・ベリナートが「visualizations that really work」(https://hbr.org/2016/06/visualizations-that-really-work)という論文で述べている、図を用いたコミュニケーションを「概念的⇄データ駆動」と「宣言的⇄探索的」の2つの軸で分類する考え方などが参考になりそうです。(キーワード的にはグラフィックレコーディングとか?)
この2つは新しい観点だったので、今後要約する際の参考にしたいと思います。
4.要約力トレーニング
- 要約力を鍛えるトレーニングがいくつか消化されていますが、中でも目を引いたのはお店の紹介を書く
- 商品の紹介を書く
の2つです。
原則として要約というものは誰が書いても内容が一致している必要がありますが、紹介に関しては魅力を伝えるために主観を交える必要があります。
そのため主観と客観を意識した書き方になるので要約のトレーニングになるとのことです。
また別の書籍になりますが。要約力のトレーニングとして岡田斗司夫さんの「頭の回転が速い人の話し方」がとても参考になります。「本を要約するトレーニング」「映像を要約するトレーニング」などがより詳しく解説されています。
5.おわりに
難しいことを簡単に説明することの弊害はあるものの、なんだかんだ簡潔に説明できる能力は必要だなあと思っていて、大事なのは「簡潔さと厳密さを意識してコントロールできるか」「誤解を与えた時のリスクを把握しているか」だと感じます。
この2つを踏まえて、今後はこのブログでも積極的に要約していきたいと思います。
ライティングの哲学で学んだことを実践してみる
僕は普段文章を書く時、構成や伝えたいこと、見る人が知りたそうなことを意識しすぎてしまいます。その結果、何をどう書けばいいか考え続けて全く進みません。
今回はたまたま手に取った、ライティングの哲学という本にそれらの悩みを乗り越える勇気をもらったので、早速実践に移してみようと思います。
哲学と聞くと難しそうに聞こえますし、実際に後半は難しく理解が及ばない点が多かったです。ただし前半の内容はわかりやすく(烏滸がましいですが)とても共感できる内容でした。
本の流れとしては
1(自称)文章を書くのが苦手な人たちが、それぞれの苦悩を打ち明ける座談会の会話ログ
2座談会を経て、文章との向き合い方にどのような変化が生じたかを各々独白する
3再度座談会を開催し、変化について語る
という内容になっています。
こう考えると悩みを打ち明けている1はとっつきやすく、苦悩と向き合ったあとの2,3が難しい内容になるのは当然かもしれません。後半の内容は理解できていない部分も多いですが、いつか共感できる日がくるといいなあ
と思います。
書くことの苦悩への具体的な対処法ですが、個人的には以下の内容が刺さりました。
・完璧に書くことは不可能
・雑にメモを残す
・思ったことをそのまま文字にする
・無駄な言葉は入れてもいい(ああ、えーと、うーん、etc...)
・資料にあたることをあきらめる
この辺りの言葉は書くことへのハードルをかなり下げてくれた気がしています。
普段は誰かのために頑張ろうと思うことが少ない自分でさえ、文章を書く時は「誰かのためになる文章を書かなきゃ!」と思ってしまう節がありました。
この本を読んでみて一旦は「誰かのために」という部分は置いておいて、思ったことを素直に書くことを決意できました。それを続けていくうちに誰かに刺さる文を偶然生み出すことができればいいなあと思います。
「データとデザイン 人とデータのつなぎかた」を読んだ感想
データ分析の職についてから現在に至るまで統計の勉強に力を入れてきました。
しかし実業務の中では高度な分析は必要ない、または分析以前の課題を抱えている状況の方が圧倒的に多く、なかなか成果につながらないという壁にぶつかりました。
そこで統計検定準一級を取得したのをきっかけに、よりビジネス寄りの勉強に力を入れていこうと思うようになりました。
現在はダッシュボード作成という業務を担っているので、その観点から面白そうな本を探していたところ見つけたのが「データとデザイン」という本です。
データとデザインという聞き慣れない組み合わせに興味もち読み始めましたが、最終的には多くの学びを得られました。(読んでから知りましたが、ここで言うデザインとは「グラフィックデザイン」はもちろん、「設計」という意味でのデザインなども含んでいます)
本書はデータを使ったプロダクト・サービスに関わる人全般に向けた本のようですが、ここではデータ分析に関わる人間の視点で「データとデザイン」という本の感想を書いていきます。
探索と提示
本書ではデータビジュアライゼーションの専門家であるスコット・ベリナートの「visualizations that really work」(https://hbr.org/2016/06/visualizations-that-really-work)という論文を引用し、図を用いたコミュニケーションを「概念的⇄データ駆動」と「宣言的⇄探索的」の2つの軸で分類しています。
概念的な可視化は本書で詳しく扱っていませんが、インフォグラフィックやグラフィックレコーディングなどが該当するようです。データを可視化するという点では直接的な関わりはなさそうですが、みやすい・わかりやすい可視化という点を強く意識する場合は参考になりそです。
宣言的とはデータを視覚的にわかりやすくまとめることで、見た人が意味を汲み取りやすい形にしたものを指します。
探索的とは様々な視点からデータを確認しネクストアクションにつながる根拠を探す機能を持つものを指します。
そしてデータ活用が身近になった現在は、普段データを扱わない人でも簡単に扱えるような宣言・探索両方の役割を持ったデータ活用が求められるようになりました。そのニーズに応えるように登場したのがBIツールであるとしています。
また「ビジネスダッシュボード設計実装ガイドブック」でも似たような分類をしているので、探索と提示を意識してダッシュボード作成するのは重要そうです。
個人的な経験だと、
提示的なダッシュボードは色・レイアウト・注釈などを適切に設定し、ぱっと見でわかりやすくする工夫が必要。
一方で探索的なダッシュボードはフィルターやパラメータなどの機能を盛り込みすぎないようにバランスを取る必要があったり、(tableauのLOD表現のような)複雑な計算をしている場合、意図した計算ができているかの検証が必要です。
どちらも違った難しさがあり、探索と提示の両方の役割を果たすダッシュボードの作成はとても難しい印象です。
本書では、著者が携わってきたプロジェクトでどのように探索と提示の融合を達成してきたかが述べられています。
アクションに繋げるには?
時間をかけて丁寧に使いやすいダッシュボードを作った後に待っているのは「次のアクションにつながるのか?」という問題です。
結論から言うと、本書には具体的なノウハウの類はきさいされていませんが、そのようなダッシュボードを作る際のヒントは得られました。以下に本の内容と僕の考えをまとめていきます。
アクションに繋がるダッシュボードに必要な要素は
- 重要な数値とそれに関連する数値を可視化する
- 次の一手を決める根拠になる
の2つかと思います。
1つ目に関してはKPI関連の本(KPIマネジメントなど?)を参考にしつつダッシュボードを作成すれば問題なさそうです。
2つ目に関しては、次の一手への解像度の高さで作成するべきダッシュボードの種類(提示か探索か)が変わってきそうです。
実行可能な次の一手がある程度決まっている場合や、すでにアクションを起こしていて継続するか否かの意思決定をしたい場合は提示型のダッシュボードで十分。一方で、何をすればいいかわからない場合や、次の一手を考えるにしても何かしらの手がかりが欲しい場合は探索型のダッシュボードが必要になってきます。
人とデータの繋ぎ方
上記ではデータをアクションに繋げるというお話でしたが、本書ではさらにデータを人間の生活に浸透させるような人とデータの繋ぎ方についても述べられています。
データが生活に浸透している際たる例として天気予報が挙げられます。
天気予報には以下の特徴があります。
なぜ多くの人が気象データを意思決定につなげることができるのか。意思決定のためには、①わかりやすく情報が提示されていることがまず重要となる。実際に気象庁が収集したアンケートでも、満足な理由の上位は予報の正確性よりも「利用しやすい」や「内容がわかりやすい」といった項目が並んでいる。天気予報は、雨雲の様子などと合わせて誰にでもわかりやすく、信頼できるかたちでデータが提示されている。そして、②次にとるべきアクションが明確である、ということも重要なポイントとして挙げられる。天気予報で示されるアクションは、傘の必要性や適切な服装など、具体的でわかりやすい。しかし、これらに加えて天気予報には、「③アクションをする本人が直接データを確認している」という一見当たり前に思える状況があることが、理想的なデータ活用を大きく後押ししている。これは要素として、現場状況を理解している、言い換えることができる。
- 櫻井稔作データ と デザイン 人とデータのつなぎかた。
このように利用者が裏でどのような分析をしているのかを意識せずに数字だけを見て次の行動を決めることができる状態が人とデータがつながっている状態と言えそうです。
また天気予報サービスを提供しているウェザーニューズでは通常の天気予報だけでなく、天気痛を予測する天気痛予報、快適な服装を予測する服装予報など、わかりやすく次のアクションにつながるという点でデータ活用のお手本のようなサービスと言えます。
どうやって繋げるか?
天気予報のように人とデータを繋がった状態を実現するために、本書では以下のプロセスが必要と述べています
- 現場を体験する
- 体験を数理モデル化
- モデルの検証
現場を体験することでデータを見ただけではわからない課題を発見できる。こうして得た体験をデータでモデル化することができれば、その体験をコントロールする手がかりになります。
このように書くと簡単に見えますが実際は
- 改善する価値のある課題を発見できるのか?
- 発見した課題はモデル化できるような類なのか?
- そのモデルの信頼性は?長期的にも使えるのか?
などなどたくさんの壁が立ちはだかっていそうです。このあたりは以下の本などを参考にしながら引き続き考えていきたいです。
「体験→モデル化→検証」の流れを深掘り
モデル化の基礎を知る
複雑なデータ可視化
「世界標準のデータ戦略完全ガイド」を読んだ感想
以前twitter(X)で見かけて気になった本を読了したので備忘録がてら、感想を書いていこうと思います。
概要
「データ戦略完全ガイド」と書いてあるように、ビジネスでデータを活用する際に必要なことを網羅的に記述している本です。
具体的にどんな内容かというと、まずデータを活用するべき理由の説明から始まり、あらゆるデータ活用は6つの目的に分けられることを事例を用いて解説しています。
次にどんな目的の場合でも必要となる、データ活用の計画策定の手順について説明があり、その後はデータの種類(構造データ、非構造データなど)、主要な分析手法、法的倫理的な問題、データインフラ、組織づくりなどについて解説されています。
対象読者
特に記載はない(見逃しているだけかも)ようですが、個人的にはこれから事業を始めようとしている起業家、新事業責任者などを対象としているように感じました。
現在データ分析の仕事をしている僕の目線では業務に直接活かすには抽象的すぎる印象でした。
個人的なポイント
この手のジャンルの本はあまり読んだことはないのですが、これ一冊でデータに関するあらゆることを網羅できる点はすごく助かります。
特に、なぜデータを活用するのかという点と分析手法やデータインフラなどデータに関わるテクニカルな観点を同時に扱っている本は珍しい気がしました。
テクニカルな部分を把握せずデータを活用しようとしても無茶な課題解決になってしまいますし、テクニカルな部分だけだとビジネスの目的を見失ってしまいます。
どちらもバランスよく要点をまとめているため、ガイドとしていい役割を果たしてくれそうです。
また、法的・倫理的問題や組織づくりの点は今まで意識してこなかった観点なので、良い気づきにつながりました。
まとめ
総括するとデータに関わるビジネスマンの教養書と言えるような一冊だと思います。
ただし、この本はあくまでガイドであるという点は注意が必要で、分析手法にしてもデータインフラにしても、この本で扱っているテーマはそれぞれで本が一冊書けてしまうほど複雑な分野なため、僕のような現場でデータ分析する人間は必要に応じて専門書で学ぶことが求められそうです。
あと、以下のスライドも合わせて見ると良さそう。